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十六世紀から十八世紀にかけて、地球の平均気温が下がって、寒い気候がつづきました。
小氷期とよばれている時期です。
とくに北半球では、現在より一度から二度近くも下がったときもありました。
アルプスで氷河がずっと大きくなり、イギリスのテームズ川が凍結し、ノルウェー沖に氷山がみられたのです。
十九世紀に入るとともに小氷期はおわって、地球の平均気温は上昇しはじめ、現在にいたっています。
地球の平均気温が、〇・五度とか〇・八度とかわずかに変わったときに、気候は大きく変化し、自然環境、人類の生活にも大変な影響をうけることがわかると思います。
現在は最後の氷河時代、ヅエルム氷期がおわって、間氷期に入ってから約一万年たっています。
この時代は、完新世とよばれています。
現在から二十一世紀のおわり頃までの部分は、IPCCの報告にもとづいて、予想される平均気温をあらわしています。
時間の取り方が、過去と違ってずっと大きく引き延ばしてあることに注意して下さい。
これからの一〇〇年間に予想される平均気温がいかに高いかということがわかると思います。
平均気温が現在より一度ないし二度高い温暖期が数千年間もつづいています。
この時期はヒプシサーマル期とよばれています。
最適な気候の時代という意味です。
ヒプシサーマル期には、アフリカ大陸のサハラ砂漠を中心とした広大な地域や中東でも、降雨量が大変多く、ゆたかな大森林が育っていました。
ヒプシサーマル期には、日本列島でも、海水面が四メートルから五メートルも高くなって、海岸線は現在よりずっと陸地の方に入っていました。
これは縄文海進とよばれています。
図13は、関東地方が縄文海進の頃どうなっていたかを示したものです。
東京の中心部は大部分海のなかだったことがよみとれます。
縄文海進は、ヅユルム氷期がおわって地球の平均気温が上がり、海水が大幅にふえたためにおこったものです。
ヒプシサーマル期のあと、日本列島の地殻が上昇し、海退かおこっています。
地球の平均気温の上昇は、スカンディナビア半島の場合、もっとも劇的なかたちで、その影響があらわれています。
氷期の最盛期には、スカンディナビア半島の平均気温は、現在よりも一〇度以上低かったといわれています。
その頃、スカンディナビア半島は、数キロメートルもの厚さの氷の下に押しつぶされていました。
いまから一万年ほど前、ヴェルム氷期のおわった頃、スカンディナビア半島はいぜんとして厚い氷の下にあって、バルティック海は氷に囲まれて、湖となっていました。
スカンディナビア半島の一部では、氷が融けはじめましたが、いぜんとして海のなかでした。
この頃、北ヨーロッパ一帯もまったく樹木のないツンドラ地帯でした。
わずかに、カバの樹木がところどころに生えているだけでした。
いまから六〇〇〇年前、ヒプシサーマル期に入ると、平均気温も現在より二度から三度高くなり、スカンディナビア半島のあつい氷床が融けはじめました。
この頃には、海水面の高さも現在と同じとなり、スカンディナビア半島の南部の海岸線はほぼ現在と同じかたちをしています。
バルティック海も、デンマーク海峡を通じて、大西洋につながっていました。
しかし、北部は現在より五〇メートル低く、いぜんとして海のなかでした。
ヒプシサーマル期が進むとともに、気候が暖かくなり、カバの森林が育ちはじめ、やがて松の林がみられるようになり、カシ、ニレ、シナノキ、ハシバミなどの広葉樹林が育つようになりました。
ヒプシサーマル期の最盛期は紀元前四五〇〇年頃ですが、そのときにはノルウェーの南部にまで、広葉樹林がひろがっていったのです。
しかし、ヒプシサーマル期のあと、地球の平均気温が下がりはじめ、広葉樹林はスカンディナビア半島からだんだん姿を消してゆきました。
スウェーデンでは、モミの森林にとって替わってしまい、南部ではブナの森林が多くみかけられるようになりました。
いまから千年ほど前、バイキング時代といわれたときがありますが、その頃、スカンディナビア半島で農業、林業がはじまりました。
いまでも、かつて農耕地だったところが、荒地として残っているのをみかけることができます。
スウェーデンはいま、世界でいちばん美しい自然をもった国の一つです。
澄みきった湖とうっそうとした森林に囲まれて、人々の生活は、文化的水準が高く、経済的にもゆとりがあります。
きびしい気候にもかかわらず、人々は人生に希望と期待をもっているようにみえます。
私は、この数年、夏はスウエとアンですごすことにしています。
ストックホルムにある王立科学アカデミーの研究所で仕事をするためです。
アカデミーはストックホルムの中心部からごく近くにありますが、まわりはすばらしい森林にかこまれ、大きな湖に面しています。
毎朝、森林のなかの小道をジョギングしながら、思索にふけることができるのは、私にとって至福といってもよいときです。
スウェーデンの人々が自然を大事にするのはなによりも、人間の尊厳をまもり、その自由をまもることが、市民にとっていちばん大事なことだという気持ちをつよくもっているからではないでしょうか。
地球温暖化は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度が高まることによっておこることをみてきました。
IPCCの報告では、二十一世紀のなか頃には、大気中の温室効果ガスの濃度は、産業革命以前に比べて約二倍になり、平均気温もまた二度ないし三度上昇すると予測されています。
平均気温がわずか二〇〇年ないし三〇〇年の間に、このように急速に上昇するというのは、長い地球の歴史でもまだ経験したことのないほど異常な出来事です。
このような急速な平均気温の上昇は、気候条件にどのような変化をもたらすでしょうか。
一九八〇年代に入ってからすでに、地球温暖化の予兆と考えられるような気候条件の変化がおきていて、異常気象が世界の各地でみられはじめました。
なかでもいちばん目立った現象は、台風、ハリケーン、サイクロンの頻度も高くなり、強度もつよくなってきたことです。
一九九〇年アメリカのフロリダを襲ったハリケーン、一九九三年のミシシッピー河の大氾濫については前にもふれました。
また、サイクロンの強度が年々つよくなって、バングラディッシュでは年々被害が大きくなっています。
なかでも、一九八八年、一九九一年とつづいて、これまでまったく経験しなかった規模の被害がおきてきたことにもふれました。
一九九〇年代に入って、世界中で雨の降り方がすっかり変わってきて、洪水、異常乾燥が相次いでおこるようになってきました。
とくに一九九一年は記録に残るような年でした。
五月に、サイクロンによるバングラディッシュの大災害がおきましたが、七月には、ビルマで今世紀最大規模の洪水がおきて、二〇万人の被害者がでたといわれています。
五月から七月にかけて、中国では、年間雨量の四倍の雨が降って、中国の歴史にもまれにみるような大規模の洪水がおこっています。
倒壊家屋三二四万戸に上り、家を失った人々は1000万人を超え、死者三〇〇〇人、被害者が二億三〇〇〇万人という大災害になったといわれています。
八月には、メコン河の大氾濫がおこり、戦後最大の被害をおこしています。
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